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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
と、利家は、二口の銘刀に、駿馬一頭を、成政に贈った。
平左衛門の報告をきき、成政はほくそ笑んだ。
「食わせ者の又左(利家)を、また輪をかけて食わせて帰ったその方は、まことに、漢土の智者謀将にもまさる者だ。いや御苦労御苦労」
婚儀の準備をいそぐと見せて、富山城の密室では軍議をこらし、武庫では、弓のつるを試し、鉄砲をみがき、また密かに軍需物資を集めていた。
八月になっても、以後、沙汰がないので、又左衛門利家は、重臣の村井長頼を使いとして、富山へやり、華典の吉日をきめたいと、相談させた。
成政は、使いに答えた。
「いにしえから、仲秋は婚姻を忌む――という伝えがある。九月ともなったら、あらためて、御談合な仕ろう」
長頼は、素直に、
「仰せのまま、申し伝えましょう」
と、馳走になって帰った。
すると、金沢への途すがら、かれの列を追って、富山から国境を脱して来たひとりの茶坊主があった。
いかに、両家の仲直りがいわれていても、国境の関所は、依然、きびしいことに変化はない。かれの脱出は、命がけでなければ出来ないことだった。
「お供衆のうちに、小林弥左衛門様と仰っしゃるお方はおりませぬか。