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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
成政は、寒さ防ぎに、酒をあたためさせ、一族、旗本たちと、鳥越城を攻め奪ったあとの――二次作戦を、しきりに協議していた。
そのうちに、座の端にいた小兵衛の影が、いつのまにか、見えなくなっていたので、
「小兵衛は、どこに参ったか……?」
と、そばの者に訊いた。
みな、気づかずにいたとみえ、顔見あわせて、
「さあ? ……。どこへ行ったのであろ。まだ、眠りもしまいが」
と、あちこちの陣幕や寝小屋を探させた。
「見えませぬ。どこにも、小兵衛の姿は、見当りません」
兵も云い、探しに行った小姓たちも、そう告げた。成政は、ふと眉をひそめて、いないはずはない、もっと入念に尋ねてみろと、酔いを殺して呶鳴った。
怪しいことには、その夜かぎり、小兵衛の姿は、どこにも、見当らなかったのである。
道案内者の逃亡に、二万余人は、山中の迷い児となった。――しかも、敵地に入る寸前においてである。
「さては、初めからこの成政に、敵意をもつ曲者であったやも知れぬ。不覚不覚。探し出して、八ツ裂きにしろ」
夜が白むやいな、成政は、部下を手分けして、谷の底、峰々の道なき奥まで探させたが、ついに、小兵衛の足あとも嗅ぎ出せなかった。