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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
「御内儀がか。うム、又左の御内儀は、筑前の気心を、よう知っておられる一人じゃ。お達者か」
「相かわらずです」
「時に、お許の、黄ラシャの陣羽織は、よう似合うな。それも御内儀の見立てか」
「いや、これは、長篠の合戦の後に、信長様から拝領した思い出ふかい陣羽織で……」
と、ふたりの話は、少しも戦争などにふれず、さながら路傍で会った一個の友と友でしかない。
松任から尾山城まで――利家が案内に立って、秀吉とその軍旅は、長い線を、えんえんと描いた。
いや、先頭が金沢へ着いても、まだ後尾の殿軍は、北ノ庄を離れなかったといわれた程だった。
おそらく、この飛報は、青天のへきれきとして、富山城の佐々成政の耳を打ったろう。
この日、八月十八日。
佐々方のうごきも、手にとるように、尾山城中の秀吉のもとへ早打してくる。
それらを綜合してみると。
佐々は、時なるかな、わが生涯の大事――とばかり、越中一国をあげて、これを防寨に堅めた。
倶利伽羅峠の左右、鳥越の嶮、小原、松ヶ根、そのほかの砦三十六城に手を加え、また、根城、木舟、森山、益山など十余ヵ所に、新たに山材大石を積んで、防柵や矢倉を組み、そのほか国境のいたる所に防ぎを設け、兵をくばり、木戸関門などを加えれば、全部で五十八ヵ所にものぼる待敵点を急設して、