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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

11 第十一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页

青空文庫

とにかく、長久手半日の激戦以後は、どっちもまた大事をとって、ひたすら一方のうごきを見、その機に乗じようとする呼吸ばかりで、かりそめにもヘタな攻撃はいずれもやらない。

誘いは、くり返された。

四月十一日、秀吉が、全軍六万二千を、小松寺山まで出したなども、その手だったが、小牧山の表情は、静かな微苦笑にすぎなかった。

その後また、同月の二十二日には、こんどは家康の方から誘いを仕掛けた。

小牧の徳川勢と信雄勢が聯合して、一万八千人を十六編隊にわかち、二重堀の前から、東へ出て、

「出でよ、秀吉」

とばかり、つづみを鳴らし喊声をあげ、先陣に酒井左衛門、井伊兵部などを立てて、しきりに挑んだ。

二重堀の柵は、堀秀政と蒲生氏郷が守るところ。敵の鼓騒するのをながめて、

「われを、あなどるもの」

と、秀政などは歯がみをした。長久手以来、秀吉の麾下は、三河武士の手なみにふかく怯じたぞと、敵は、声を大にして云い囃しているからだ。

だが、秀吉からは、命をまたず、みだりに兵を動かすべからず――と厳命されているので、ただ、伝令をすぐ本陣へ飛ばして命令を待つしかない。

この日、秀吉は、小松寺を本営として、於通をあいてに、碁を囲んでいた。