轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

08 第八分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 页

青空文庫

間もなく、眠れる湖沼の水面にはむくむくと諸所に活動が起りはじめた。無数の大きな渦とそれに伴う水と地殻の咆哮であった。ぐわうッと闇を鳴る異様な音響でもあった。

「よしッ」

六郎太夫は松明を踏み消してもとの方へ駈けもどった。――時すでに、秀吉と秀吉をかこむ近衆小姓、将士たちの一群は、金瓢の馬簾を中心に、槍の光を並べ、弓をつらね、鉄砲をそろえ、青葉の露の頻りに降る暗い坂道を、一糸の紊れもなく、粛々と麓へむかって降りかけていた。

進撃はなおやすく退軍はより難しいという。

和睦成っての引き揚げとはいえ、秘中の秘はなおつつまれている。ひとたび彼に豹変があろうと、その責めは秘を包んでなした秀吉に帰さねばならない。

「おう。あの声は……」

彼は馬を止めて、虚空に耳をすました。嵐か海嘯かとも疑われる水の唸りが夜空を翔けまわってゆく。――一時に十数ヵ所の堰を切って、阻めるものを知らず流れ狂う濁水は、瞬く間に、毛利方のいる岩崎、天神、黒住などの高地を余す以外の地をことごとく水と泥とに化してしまうであろう。秀吉は想像した。

その水脚が迅いか、一鞭東へさす彼が迅いか。石井山はあとになった。