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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

08 第八分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 页

青空文庫

風は追手

さすがに、手紙の末になるほど、筆のあとも走り書きに見えた。

秀吉は満足した。そして使いの者へ、

「立ち帰って後、もしなお、母や妻が無事でいたら、見た通りを伝えておけ」

といったのみで、彼は忽ちその一室を出ていた。折ふし城頭で吹く一番貝の音が城内城下へ流れていた。

風は追手

姫路城の内外から立つ炊煙は一時天も賑わうほどだった。一番貝の音とともに将士は、みなみな飯を喰いにかかった。秀吉もまだ広間の中央にあって、具足のまま飯茶碗をかかえていた。養子の秀勝、堀秀政、彦右衛門正勝、官兵衛孝高などみな同座だった。

「何杯目か。これで」

秀吉は自分の喰べた量を傍人に訊いていた。給仕の侍が、

「四膳召し上がられました」

というと、苦笑して、

「湯漬を、もう一碗」

とまた求めた。

箸の間にも、彼は、その旺なる食欲と同じように、絶えまなく時務を聴き、処置を断じ、また発足の措置をあれこれと左右へ命じておくなど、飽くまで旺盛な気力と周到な頭脳を働かせていた。

さきに金奉行へいいつけておいた在庫金の分配のことも、

「終りました」

と、告げて来たし、庫中の在米を家中の家族へ残りなく頒け与えることも、