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にほんのでんせつ
日本の伝説
柳田 国男
「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页
そうしてもし児童が関係をしなかったら、日本の伝説はもっと早くなくなるか、または面白くないものばかり多くなっていたに違いないのであります。
だから皆さんが若いうちに、きいて置く話が少くなり、またそれを覚えていることがだんだんにむつかしくなると、書物をその年寄りたちの代りに、頼むより外はないのであります。書物には大人にきかせるような話、大人が珍しがるような話が多いのでありますが、今ではこの中からでないと、昔の児童の心持ちを、知ることは出来ぬようになりました。国が全体にまだ年が若く、誰でも少年の如くいきいきとした感じをもって、天地万物を眺めていた時代が、かつて一度は諸君の間にばかり、続いていたこともありました。書物は廻り廻ってそれを今、再び諸君に語ろうとしているのであります。
もとは小さな人たちは絵入りの本を読むように、目にいろいろの物の姿を見ながら、古くからのいい伝えをきいたり思い出したりしていたのであります。垣根の木に来る多くの小鳥は、その啼き声のいわれを説明せられている間、そこいらを飛びまわって話の興を添えました。路のほとりのさまざまの石仏なども、昔話を知っている子供等には、うなずくようにも又ほほえむようにも見えたのであります。