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にほんばしふきん
日本橋附近
田山 花袋
「東京日日新聞」1927(昭和2)年4月19日〜5月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,383 字 · 37 页
九
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日本橋附近という題目からはやや遠くなるけれども、あの眼鏡橋(万世橋)あたりのさまも次手にここに書き残して置きたい。そこは明治の初年の錦絵にも新東京の名所のひとつになっていてあの眼鏡のような丸い空間を二つ持った石造の橋は、いなかから出て来る人達をめずらしがらせたものだが今ではその橋もその位置も全く変った。その昔のさまを知っているものは少ないであろうと思われるが、それでも私はおり/\そこに、その今の万世橋の北側の欄干によって立留って、その当時のさまを眼の前に浮べて見るのが、例だった。
私はその時分の橋の上の賑かであったことを、またそのこっちに渡って来たところにきたない共同便所があって、上野あたりに出かけて行く時には、私もよくそこで用を足したことを、またそのこっちが火除地になっていて、そこにまばらに柳の緑がなびいていたことを、その火除地というのは明暦の大火があったために、丁度震災後に小公園を多くする必要を感じたと同じ理由で有名な橋の袂には必ずそうした広場がつくられてあったものだが、そこに露店だの小興行の肆だのがにぎやかに並んでいて、時には砂書きや大道易者が大勢そこに群集をあつめていたことを思い浮べた。