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にほんばしふきん
日本橋附近
田山 花袋
「東京日日新聞」1927(昭和2)年4月19日〜5月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,383 字 · 37 页
十一
私はぞく/\するような喜びに満たされながら半ば土蔵づくりで半ば洋館づくりの不調和な、その時代の統一しないさまをそのままそこにあらわしているような大通りをさみだれの雨にぬれつつてく/\歩いて来たことをはっきりと覚えている。
否、ナチュラリズムでも、デカタンでも、人道主義でも、またネオ・ロマンチシズムでも、すべてその一書肆の門戸から入って来たということは、今考えて見ると、不思議に思われた。そういう形からいっても、その日本橋の大通りは私に深い縁故を持っているものといって差支なかった。
私はどっちかというと、いろ/\な通を並べたり、またいろ/\な食物店を食って歩いたりする方ではない。従って日本橋界わいあたりの細かいことは知らない。鮨だとか、天ぷらだとか、そういうことも詳しく知っているとはいえない。木原店も浮世小路も歩いたことは歩いても、大したことは知っていない。しか丸善の棚をとおして、十九世紀末から二十世紀の初期にわたって海外の思潮に触れた形は、私に取ってはひとつの誇りとするに足りた。私は今でもその頃のことをおり/\思い起した。
十一
通四丁目の角から入って行った細い通りにある静かな一室で私達はこんな話をした。