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にほんせいしんしけんきゅう
日本精神史研究
和辻 哲郎
推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月
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以上、歌われた感情についての観察は、この感情の表出法についても繰り返すことができるであろう。
ここにもまず、問題を簡単にするために、ほぼ同様の感情を歌ったと認められるものを比較する。
浅緑糸よりかけて白露を玉にもぬける春の柳か (古今、春上、遍昭)
浅緑染めかけたりと見るまでに春の柳は萌えにけるかも (万葉、巻十、春雑)
これらはともに芽の萌え出た柳の美しさを詠嘆したものである。が、前者は、糸と玉との比喩によって柳を詠嘆することを主眼としている。浅緑の糸を縒って、掛けて、白露を玉にしてつないでいる春の柳、いかにも美しい、というのである。それに対して後者は、糸を染めて掛けた光景を暗々裏に示唆しないでもないが、しかし必ずしもその比喩によって表現しているのではない。細く長く柔らかく垂れた柳の枝が、浅緑に染めて掛けられたように見える、それほど柳が萌えた、美しい、というのである。浅緑に染めて垂らしたという現わし方は、急速に今萌え出たばかりの柳の枝の、あの新鮮な感じにふさわしい。この「浅緑に染める」という言葉の代わりに、「浅緑の糸を縒る」という言葉を置けば、もはやそこにはあの新鮮な潤いのある色の感じは出て来ない。