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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页

青空文庫

『竹取物語』は、「写実的」ということを特長とする世態小説ではない。その相反である。それはただお伽噺としてのみ正当に評価せられる。

古い日本人にはお伽噺への傾向は顕著に存していた。『古事記』のうちに我々はその好個の例証を発見する。いなばの兎の話、鯛の喉から釣り針を取る海神の宮の話、藤葛の衣褌や弓矢に花の咲く春山霞男の話、玉が女に化する天の日矛の話、――これらを我々はお伽噺と呼び得ぬであろうか。奈良朝に至っては、浦島の伝説を歌った有名な長歌(万葉、巻九、雑歌)がある。これは、「春の日の霞める時に、住吉の岸に出で居て、釣舟のとをらふ見れば、古の事ぞ念はる」と歌い出し、浦島の子が海神の妙なる殿に神のおとめと二人いて、老いもせず死にもせずに、永遠の幸福な日を享受し得たものを、「愚かにもこの世に帰って来た」と詠嘆した叙情詩である。しかしここにもお伽噺の世界への強い興味が存することは認めてよいであろう。日本古来の神話的・お伽噺的形象の上にシナの神仙譚の影響を受けたらしい「仙女」(常世の天少女)への憧憬は、歌人が好んで歌った題目であって、彼らの空想にはこの超自然的な永遠の美女とその世界とが欠き難いものになっていた。