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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页

青空文庫

として、真夏の日の日盛りに下等な牛をつけてのろのろと行く穢い車や、年老いた乞食や、身なりの悪い下種女の子を負える姿や、黒くきたない小さい板屋の雨に濡れた光景などをあげた。これらの姿を「わびしく」見る心は、人生の不調和に痛み傷つかない心ではない。しかし彼女は、倫理的なものと美的なものとに対して、異なった標準を持っているのではなかった。「にくきもの」として彼女は、「急ぐ事あるをりに長言する客人」、「ことなる事なき男の、ひき入れ声して艶だちたる」というごときをあげるとともに、その場に「墨の中に石こもりて、きしきしときしみたる」、「墨つかぬ硯」などを並べている。思う壺にはまって来ない、不調和なものは、彼女にとって一様に醜である。倫理的なものもまた美的規準によって評価されるのである。従って彼女は、「才ある人の前にて、才なき人の、物おぼえ顔に人の名などを言ひたる」を「かたはらいたきもの」と感ずるとともに、「にくげなる児を、おのれが心地にかなしと思ふままに、うつくしみ遊ばし、これが声の真似にて、言ひけることなど語りたる」にも同情する余裕を持たない。醜い子供を美しいと強弁する母親に対しては、かたはら痛い感じを抱くにも道理があるが、しかし醜い子供をも嬉しげに愛する母親の姿は、倫理的に見て、美しくはあっても醜くはない。