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にほんせいしんしけんきゅう
日本精神史研究
和辻 哲郎
推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页
平安朝盛期の傑作と目すべきものは、すべて皆婦人の作である。すなわち婦人がこの時代の精神を代表するのである。従って我々はかの「物のあはれ」と女の心との密接な関係に想到せざるを得ない。
数多く描かれた恋愛の物語を通じて、我々は次のごとく言うことができる、この時代の男は女よりもはるかに肉的である、しかもそこに万葉人に見るごとき新鮮な、率直な緊張はなく、弛んだ倦怠の情に心を蝕まれている、と。彼らの生活の内容をなすものは、官能的な恋かしからずば権勢である。しかも彼らは恋においても権勢においても、その精神的向上に意を用いることがない。しかるに女は、恋を生命としつつ、しかも意志弱き男の移り気に絶えず心を掻き乱される。彼らが恋において体験するところは、はるかに切実であり、はるかに深い。彼らはここに総じて人生の意味価値を思量し、永遠への思慕に根ざす烈しい魂の不安を経験する。かくて彼らの精神は、緊張し、高まり、妊み、そうして生産するのである。明らかに女らは、精神的に言って、男よりも上に出ている。しかし女らには、このより高い立場から男を批評する眼は開けなかった。彼らにとっては、現前の男が畢竟男であった。