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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页

青空文庫

自分はそうは思わない。彼の言葉のうちにも自分が自信をもって「解し得たり」と感ずるものがある。門内の人の注釈を読んで、自分の意見との一致を認めることもあれば、あるいはその注釈の浅薄に気づく場合もある。自分はこれらの点について「説いてはならない」とは考えることができぬ。もとより自分は「解し得た」だけを自分の生活に実現し得たとは言わない。たとえば、自分は彼が「衣糧に煩ふな」と言い、「須く貧なるべし、財おほければ必ずその志を失ふ」と言った心持ちを解し得たと信ずる。これらは「一日の苦労は一日にて足れり」「往きて汝の有てる物をことごとく売りて、貧しき者に施せ。さらば財宝を天に得む」「富めるものの神の国に入るはいかに難いかな」というごとき言葉とともに、唯一なる真理を体得した人の自由にして清朗なる心境、その心境に映った哀れな人間の物欲を、叱責しつつ憐れみ嘆く心、の表現である。自分はその心を理解し、その心境に憧憬する。しかし自分は人並みの暮らしをするために明日を煩い、わずかながらも財を貯え、また財を得るための努力をする。もし我々が自己の生活に実現し得たものでなければ説いてはならないのであるならば、自分は道元のあの言葉を説くべきでない。