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にほんせいしんしけんきゅう
日本精神史研究
和辻 哲郎
推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页
――昔、智覚禅師という人は、初めは官吏であったが、国司となっていた時に、公金を盗んで衆に施した。それを傍人が皇帝に奏したので、帝は驚き諸臣も皆怪しんだが、罪過すでに軽からざるゆえに、死罪に定まった。その時帝が言うには、この男は才人である。賢者である。今ことさらにこの罪を犯すのはあるいは深き心によるかも知れない。首を切ろうとする時、悲しむ気色あらば、速やかに切れ。もしなければ、切るな。勅使はその旨をうけて死罪の場に臨んだ。罪人は平然として、むしろ喜びの色を見せている。そうして「今生の命は一切衆生に施す」という。勅使は驚いて帝に奏した。帝はいう、そうだ、定めて深い心があるだろう。そこで罪人を呼んでその志をきいた。その答え、「官を辞して、命を捨て、施を行じて、衆生に縁を結び、生を仏家に受けて、一向に仏道を行ぜんと思う」。道元はこの物語を結んで言った、「今の衲子もこれほどの心を一度発すべきなり。これほどの心一度起さずして仏法悟ることはあるべからざるなり」(随聞記第一)。
これほどの心とは、「命を軽んじ、衆生を憐れむ心深くして、身を仏制に任せんと思ふ心」である。