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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页

青空文庫

七 社会問題との関係

七 社会問題との関係

道元は俗人の世界を認め俗人の徳を認めた。しかし彼は、この俗人の徳もまた徹底する時僧の徳に一致すべきものであることを、――「私欲」を去って「天意」に即くことが畢竟「煩悩」を断じて「仏意」に従うことに帰着すべきであることを、説こうとはしない。なぜなら「私欲」を去ることは、必ずしも肉欲や食欲を克服することではないからである。俗人が私欲を去って道を存する、それによって実現せられようとする理想の世界は、一切の民衆がその欲するままに肉欲を充たし食欲を充たして、しかも争いなく不公平なき世界である。しかし彼にとってはこの種の欲望の充足は何らの価値をも意味するものでない。欲望そのものがすでに苦悩の因であり、欲望の充足はさらに新しき苦悩の因である。それらは単に克服せらるべきものに過ぎない。人が真実に目ざすところは、これらのものを越えた大いなる価値である。

このために道元は俗世界における生活不安を俗世界の徳によって救おうとはしない。生活不安の根源は畢竟人の欲望にある。この不安を救うものはこの根源を断ずる仏祖の道のほかにはない。ここにおいて彼はただ仏祖の道の顕現にのみ努力する。