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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页

青空文庫

以上の観察によって我々は結論することができる。『大宝令』を制定した政治家はある意味で社会主義的と呼ばれ得るような理想を抱いていたのである。それは民衆が富の分配の公平を要求したためにしかるのではなかった。また経済学的な理論によってそこに到達したのでもなかった。彼ら政治家を動かしていたのは純粋に道徳的な理想である。「和」を説き「仏教」を説き聖賢の政治を説く十七条憲法の精神に動かされ、断乎として民衆の間の不和や困苦を根絶せんと欲したのである。前にも言ったごとく、この制度がいかなる程度に実現されたか、また何ゆえにこの後に私有地が拡大し、何ゆえに平安朝末期の変革を呼び起こさなくてはならなかったかについては、別に考察すべき多くの重大な問題がある。しかし実行の点で何があったとしても、この種の制度を確立した政治家の理想そのものには十分の意義を認めざるを得ぬ。「一種の空想に過ぎないこの極端な共産的制度が長く継続せらるべきものでないことは云ふまであるまい」(津田左右吉氏、貴族文学の時代、四二ページ)というごとき見方は、この偉大な歴史的事実を理解したものと言えない。