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にほんせいしんしけんきゅう
日本精神史研究
和辻 哲郎
推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页
もし純粋に前者であるならば、我々は「つひに一夜さも家の下で寝たことのない」、そうして産後幾日も経ずして「雪の蒲団に添乳する」この旅の女に、拘りなく同感することができるであろう。しかしその場合には何よりもまずこの激情的な夫への愛が、彼女の一切の苦悩の原因として、強く前景に押し出されねばならぬ。そうしてそれはこの作者のほとんど顧みないところである。彼はただこの場合政右衛門の足手まといとして妻と子とを必要とした。足手まといの意味を強めるために彼は、その妻を、雪の夜道に倒れて癪に苦しむ女として描いた。総じて一人の母親が、このような境位において、その嬰児のために苦しむだろうと思える最も根源的な苦悩を描いた。作者にとっては、この苦悩の正当な動機づけは問題でなく、ただその苦悩によって政右衛門の犠牲のこころを深めれば足りるのである。従って政右衛門は、ここでもまたこの不思議な偶然に対して、何らの驚異をも感じない。妻がどうしてこんな夜道に旅しているかの原因をさえも聞こうとしない。あたかも敵討ち以外には全然重大なことが起こり得ないかのごとくに、――すなわちこの不思議な妻の出現が、何らか非常に重大なことを告げ知らせんためであるかも知れぬという可能性が全然ないかのごとくに、ただ敵のありかを知ることのみに焦心し、包むわが名の顕われる