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にっき
日記
宮本 百合子
20 一九三六年(昭和十一年)
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 15,424 字 · 32 页
十月十二日
大してさむくなし。
午後、電報ガワセが来る。「雨がふって来たよう」と子供が叫ぶ。どうしようと云っていたが、到頭出かけ、湯田中までゆき、ステーションまで下って、小海線新□のネダンをきく4.56銭の由。駅から少しのぼったところに林檎畑あり。赤く色づきはじめたリンゴの実が、折から雨にぬれて、変につやのない新鮮な美しさで枝もたわわ。それは隅の一本。栄さん名づけて「ああこれはマネキンリンゴだ」
○実をとるために 枝につけたままの赤いトマト
○青々した菜畑。石垣で一寸低くなっているところ。乱菊のエビ茶の花。「山の内劇場」ののぼり。桜の木の下に黄色い乗合の背中が見えている。うしろは靄が中腹にある杉山。
〔欄外に〕
「せきや」とかいた太い雨傘。
○「雀のお宿」へしるこをたべによる。ナシ、クサモチ、茶を出す。
河原、ごろた石の間を流れ下っている河。
◎紫の衣をきて通る坊主
○山道の婆さん、「へえ、葬式があったァね、芳野屋という温泉宿で――」
「脂がぬけて却って早くおっちぬねえ」
水をはこんでいる女が、この間志賀高原の道で夫婦で竹をつんだ車の前びきをしていた女、笑って歩いて来て、アイサツをした。