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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
岡本綺堂『明治劇談 ランプの下にて』。同一底本的分册已合并为一书。收入:明治劇談 ランプの下にて、明治演劇年表。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 页
大入り場は一人二十銭である。それに対して明治座は左団次、権十郎の一座で、桟敷四円三十銭、高土間三円二十銭、平土間二円三十銭、これも勿論五人詰の価で、大入り場は一人十五銭である。かれこれ対照してみると、明治座は歌舞伎座よりも土間桟敷一間に付いて十銭ずつ廉いのである。一間で十銭、一人について二銭ずつの差でも、明治座の方が廉いと思われようという一種の競争心が潜んでいたことを考えると、その時代の物価や生活程度も想像されるではないか。その当時に、今日のような観覧税などを絞り取ったら、興行師も観客も眼をまわしたかも知れない。
この興行は、歌舞伎座の狂言が「おこよ源之丞」と「二十四孝」と「明烏」で、一月十二日正午十二時に開場し、明治座は「伊達騒動」の通し狂言で、同日午前十時に開場した。大劇場が元日早々から開場するというのは、大正以後のことで、大劇場は決して松の内に開場するものではなかった。大劇場を見物するような客は、それぞれ新年の用事があって、松の内なぞに芝居見物に出てはいられないというので、早くても八日以後でなければ開場しないのが例であった。小芝居は大抵大晦日に初日を出して、元日から引きつづいて興行していた。