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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

象の鼻「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年1月<br>消えた足跡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年2月<br>智恵の火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年3月<br>名探偵「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年4月<br>空中曲芸師「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年5月<br>針の穴「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年6月<br>お雛様の花びん「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年7月<br>幼虫の曲芸「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年8月<br>冷たい火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年9月<br>魔法眼鏡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年10月<br>月とゴム風船「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年11月<br>兎とカタツムリ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年12月<br>白と黒「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年1月<br>風のふしぎ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年4月<br>飛行機を生み出すたのもしい力「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 页

青空文庫

一太郎君はマリを拾って、塀の外へなげ返してやろうと思って、縁側から庭下駄をはいておりて行きました。そして、塀の近くの立木の下をさがしていますと、玄関の方から、

「マリをとらせて下さい」

と叫んでいる子供たちの声がきこえて来ました。

一太郎君は表の方からお庭へ入る枝折戸のところへ行って、それを開きながら、

「ア、賢ちゃん広ちゃんだね。君達も入ってマリをさがすといいや。なかなかめっからないんだよ」

と、二人の少年をお庭へさそい入れました。

そして、三人づれで立木の下をしばらくさがしまわっていましたが、やがて、賢ちゃんという子供が、

「アッ、ここにあった。こんな穴の中へおちていたんだよ」

と、云って塀ぎわの地面を指さしました。

それは、ゴムマリよりもちょっと大きいぐらいの広さで、一米もあるような深い穴でした。少し前までは、そこにお庭を照らすための電燈の柱が立っていたのですが、電気節約のために、それをやめて、柱をぬかせてしまった、そのあとの穴なのです。

賢ちゃんは地面に腹這いになって、右手を肩のへんまでその穴の中へ入れて、マリを取ろうとしましたが、穴が深くて、指がマリにとどかないことがわかりました。