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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

象の鼻「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年1月<br>消えた足跡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年2月<br>智恵の火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年3月<br>名探偵「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年4月<br>空中曲芸師「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年5月<br>針の穴「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年6月<br>お雛様の花びん「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年7月<br>幼虫の曲芸「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年8月<br>冷たい火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年9月<br>魔法眼鏡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年10月<br>月とゴム風船「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年11月<br>兎とカタツムリ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年12月<br>白と黒「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年1月<br>風のふしぎ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年4月<br>飛行機を生み出すたのもしい力「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 页

青空文庫

それから西の方へかくれる時にも、また大きくなる。なぜ空の上の方では小さくて、出る時と入る時には、あんなに大きく見えるのだろうね。さあ、今日の問題はこれだよ。答えられるかい」

高橋さんは、あの意味ありげな笑い方をして、じっと一太郎君の顔を見るのでした。

一太郎君は、はっとしました。わかりきっているように思っていたことが、ほんとうは、少しもわかっていなかったからです。出る時と入る時には、月が私たちに近くなるので、大きく見えるのでしょうか。けっしてそんなことはありません。月は地球のまわりを廻っているのですから、出る時と入る時だけ、ことさら地球に近くなるわけがありません。

近いから大きく見えるのでないとすれば、では、なぜでしょう。なぜ、あんなに大きく見えるのでしょう。

高橋さんの質問は、いつもこんな風に、一太郎君をびっくりさせるのでした。ごくなんでもないことの中から、じつにふしぎな、あっとおどろくような問題を探し出して、見せてくれるのです。

「ハハハ、すっかり考えこんでしまったね。それじゃ、君はあの屋根の上の月が、ほんとうに大きいと思っているのかい」

高橋さんは、また妙なことをいいだしました。