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とうきょうじんのだらくじだい

東京人の堕落時代

杉山 萠円

「九州日報」1925(大正14)年1~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,226 字 · 247 页

青空文庫

検閲係官の苦痛

ほかのものと違って密輸入が六ヶしいというような関係があるのかも知れぬ。

警視庁にはこの種のフイルムの押収したのを沢山溜めている。それを昨年の夏、或る特別な人々に限って映じて見せたそうである。特別な人とは映画関係業者、教育関係者、映画関係係官の中から撰まれた少数の人々で、参考のためとも、見せしめのためとも、又は御愛嬌とも考えられた。

場所は警視庁の検閲室で、次から次へ映写される場面はいずれも型の如きものであった。何等芸術的の価値あるものでなかったが、官吏も商売人も昂奮の極情欲なぞは少しも起らなかった。只悽愴たる感じにのみ打たれた。

済んで室を出てから笑う者などは一人も無かった。血色のある者も一人も無かった。皆青白く唇を噛んで、眼が血走って、まるで地獄の責苦から逃れた人のように生汗を流していた。挑発も度を過すと、却ってその情を圧迫して萎縮させてしまうものだとその中の一人は云った。

尚、右に就いて一人の官吏はこんな話をした。

検閲係官の苦痛

「世間ではよく小説や何かの検閲係の役人が、只文句ばかりに拘泥して禁止をする。裏面の意味は却って見逃す事が多いために、いろんな不公平が起る。