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とうきょうじんのだらくじだい
東京人の堕落時代
杉山 萠円
「九州日報」1925(大正14)年1~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,226 字 · 247 页
Mの字の売り切れ
或る事とは、不良少年少女の団体が、どんな風に活躍しているかという事であった。
しかし、それが又、片っ端から骨折り損になって行くのにはウンザリした。何一つ収穫なく、コーヒーで腹をダブダブにして、電車に揉まれて帰るのは全くイヤなものであった。
しまいには事実上殆ど匙を投げてしまった。
ところが――。
Mの字の売り切れ
ずっと前、東京市中の学生仲間に鳥打帽大流行の事を書いた。そんな材料を調べている最中の事であった。
神田の或る大きな帽子屋に、ちょっと気に入ったネクタイがあったから、這入って見ているうちに、一人の学生が這入って来た。
「Mって字、ありますか」
「Mは生憎売り切れまして、ほかの字では如何で……」
と、番頭はボール箱を取り出した。中には、鳥打帽の前庇を止める、金文字付きの留針がズラリと並んでいる。
「弱ったなあ。しようがないな、どこでも売り切れて」
と学生はボヤきながら、何文字か一つ買って行った。
記者は別に深い考えなしに、只一寸した好奇心に駆られて、その四十恰好の番頭にきいて見た。
「Mって字はどこでも売り切れかね」
「ヘエ。Mの字が一番よくお持ちになりますようで……」