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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
夜具といっても、夏のことで、敷ぶとんと丹前ぐらいだった。
「じゃあ、蚊帳がせまくて窮屈だろうけれど、お鶴もいっしょに二階に寝てもらったら、どうだえ。」
お祖母さんが、わりあい機嫌のいい顔をして言った。
「それがいい。狭いのも、かえって昔を思い出していいだろう。校番室だって、そう広い方でもなかったからね。」
と、俊亮が笑った。
お浜も、やっと笑顔になった。
そのあと、お芳が、一人でこそこそと夜具をそろえて、それを階段の方に運びだした。それに気づくと、次郎がすぐ立って行き、階段のところでそれを受取って、二階に運んだ。
二人はべつに口をききあわなかった。次郎は、しかし、妙に心がおどるような気持だった。それはお浜と二階に寝るようになったからばかりではなかったらしい。
「まあ、すみません。あたしたちの夜具まで、坊ちゃんに運んでいただいて。」
次郎が夜具を運び終ったころ、お浜が二階にあがって来て、言った。お鶴もそのあとについて来ていた。
六畳の蚊帳の中に、三人の夜具を入れるのは、かなり無理だった。それでも、どうなり蚊がはいらないだけの工面をして、三人は、はしゃいだ笑い声を立てながら、もう一度、階下におりた。