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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

」

次郎は何も考える余裕がないほど狼狽していた。で、ほとんど反射的にそんな言葉が彼の口からつぎつぎに爆発したのである。

朝倉先生は、微笑しながら、

「君はお父さんをそんなに信用しないのかね。」

「だって、父は人を教えた経験なんかまるでないんです。本もそう沢山は読んでいないんです。」

「問題は教育者としての経験じゃない。本を読んで得た知識なんかじゃ無論ない。大事なのは人間だよ。」

「だって、……」

「君はお父さんを人間として信用しているはずだと思うが……」

「そりゃあ、……そりゃあ信用しています。」

次郎はどぎまぎして答えた。

「じゃあ、君が不賛成をとなえる理由はないよ。」

「僕、しかし、あんまり突飛だと思います。」

「ちっとも突飛じゃあない。これほどあたりまえのことはないよ。」

「でも、みんなに笑われます。」

「君は君自身のお父さんだということにこだわっているからいけない。第三者として考えてみれば何でもないよ。新賀や梅本はきっと喜ぶだろうと思うね。……二人とも君のお父さんを知っているんだろう。」

「ええ、知ってはいます。」

次郎は、気乗りのしない返事をしながら、これまでに二人が何度も父にあい、そのたびごとにいい印象をうけたらしく、次郎に対してしばしば彼らの羨望の気持をもらしたことを思いおこしていた。