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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
一三 送りの日
私にはそんな気がしてならない。」
三人は、めいめいに先生のこの言葉の意味を味わいながら、默々として帰った。
月はみがきあげたように光っていたが、三人ともそれを仰ごうともしなかった。
一三 送りの日
朝倉先生の送別式は、翌日の午後、型どおりに行われた。それは全く型どおりであった。何かにおびえたような、きょときょとした花山校長の態度と、生徒たちの顔をたえずさぐるように見まわしていた西山教頭や曾根少佐の眼が、いくらか生徒たちの嘲笑と反感とを招いたというほかは、何のへんてつもない、きわめて平凡な送別式であった。朝倉先生は、ほんの三分ばかり、これまでのどの先生の告別の辞よりも形式的だと思われるようなあいさつをしたに過ぎなかったし、生徒を代表して平尾が述べた送別の辞も、どの先生にも適するような、お定まりの言葉の羅列にすぎなかった。また、全校生徒が特別に一円ずつ醵金して贈呈するはずであった記念品も、まだ用意が出来ていなかった。そして、送別式がすんで、生徒たちがまだ講堂から出きらないうちに、朝倉先生は、もう、玄関に待たしてあった人力車にとびのって、駅の方へ急いでいたのであった。