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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

一四 残された問題

そう考えた時に、彼は、駅の待合室で同じことを考えた時以上に、ぎくりとした。それは、ついさっき曾根少佐に対してとった自分の態度が、やはり飛びあがりものの態度ではなかったか、と思ったからである。

彼は車中の朝倉先生を想像した。夫人と向きあって、相変らず険しい眼をしてじっと何か考えていられる。先生の眼には、もう永久に、あの澄んだ涼しい光はもどって来ない。そんなふうにさえ彼には思えるのだった。

彼は歩く元気さえなくなり、土手にたどりつくと松かげの熊笹の上にごろりと身を横たえた。そしてじっと青空に眼をこらしたが、その青空からも、朝倉先生の険しい眼が彼を見つめていたのだった。

一四 残された問題

次郎は、それから小一時間もたって家に帰って来たが、二階では、大沢、恭一、俊三、それに道江の四人が、額をあつめるようにして、何か話しあっていた。

次郎があがって行くと、四人は急に話をやめ、一せいに彼の顔を見た。彼は直感的に、四人がそれまで自分のことを話していたにちがいない、という気がした。そして、つっ立ったまま、ほんの一二秒彼らの顔を見くらべたが、道江の眼に出っくわすと、てれくさそうに視線をそらし、默って俊三と大沢の間にわりこんだ。