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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

しかし、二人ともすました顔をしている。

「いったい、いつごろご出発です。」

「あさって。」

と、朝倉先生は奥さんを顧みて、

「大丈夫、あさっては立てるだろう。」

「ええ、お二階の文庫さえ片づけば。」

次郎は眼をまるくして二人を見くらべていたが、急にくってかかるように言った。

「すると、僕たち白鳥会員はいつお別れの会をすればいいんです。」

「べつにあらたまってそんな必要もないだろう。」

「先生!」

と、次郎は泣声になり、

「それは無茶です。僕たちは、まだ、先生がこれからどんなお仕事をされるか、まるで知ってないんです。どこに行かれるかも知ってないんです。」

「何をするかは、私自身にもまだはっきりわかっていない。行く先は一先ず東京だ。みんなには君からそう言っておいてくれたまえ。送別式の時には言うつもりではいるがね。」

「先生!」

次郎は叫んでテーブルの上につっ伏した。両肩が大きく波うっている。

「何も激することはない。小さなことにとらわれてはいかんよ。」

「小さなことじゃありません。」

「別れの会なんか、どうでもいいことだよ。もっと永久のことを考えてもらいたいね。」

「永久のことを考えるから、言っているんです。