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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

それについて考えてみたかね。」

次郎は面くらった。まさか父はストライキをやれというのではあるまい。だとすると、学校の言いなりになって、おとなしく引きさがるよりほかに仕方がないではないか。――

次郎が考えこんでいると、俊亮は、だしぬけに、まるで次郎の問題とは無関係なようなことを言い出した。

「おまえがまだ七つ八つの子供のころに、近在のならず者がよくうちにやって来て、酒をのんだりしていたことがあるが、それを覚えているかね。」

次郎は、「指無しの権」とか「饅頭虎」とか綽名されていたならず者共が、酒をのんでけんかを始めたのを、父が仲にはいって取りしずめた時の光景を、今だにはっきり覚えている。で、そのことを言うと、俊亮は、苦笑しながら、

「そうそう、そんなこともあったね。ところで、ああいう無茶な連中でも、やはり人間は人間だったんだ。こちらの出方ひとつでは、良心というか何というか、とにかく人間らしい正直さを見せたもんだよ。世の中に、腹の底からの悪人というものは先ずないと思っていいね。」

次郎は、最初、父が自分をならず者あつかいにしようとしているのではないかと思って、ちょっと意外な気がした。