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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

提出の時期は、早ければ早いほどいいし、これからすぐにも校長の私宅をたずねたい気がするが、平尾の問題があるから、きょうだけは我慢したい。とにかく、平尾が応ずる応じないにかかわらず、あすは必ず始業前に血書を校長に手渡しするつもりだ。」

これに対しては、誰も異議を唱えるものはなかった。また、総務以外の二人の人選についても田上に一任するということになった。すると田上は即座に新賀と梅本の二人を指名した。新賀はきょうの会議に血書を持出した本人であり、梅本は平尾攻撃の急先鋒だったが、これからはもっと協調する必要がある、というのがその理由であった。みんなはほがらかな笑いごえと拍手をもってこの人選に賛意を表した。新賀も梅本も、むろん喜んで血書提出の役割をひきうけることを誓ったが、二人とも、心のどこかに何か割りきれないものを感じていた。それは、血書の作製者である次郎本人が、自分の希望からだとはいえ、あまりにも表面からかくれすぎてしまったように思えたからであった。

田上と新賀と梅本とをのこして、みんなはすぐ解散した。血判をやったということが、今は彼らに何か大きな誇りででもあるように感じられ、階段を下りる彼らの足どりはいつも以上にはずんでいた。