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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
」
「しかし、それなら、なおさらこんな時には活躍しそうなものじゃないか。」
「活躍する元気がないほど打撃をうけているとすると、大いに同情に値するね。」
「そんなばかなことがあるもんか。何かほかにわけがあるんだよ、きっと。」
二三人が渡り廊下に背をもたせてそんなことを話しているところへ、馬田がやって来て、仲間に加わった。
「何だい、わけがあるって。」
「本田のことだよ。あいつ、朝倉先生の問題だというのに、昨日から一言も口をきかないのがふしぎだって話しているんだよ。」
「ふうん、本田か。……あいつはだめな奴さ。」
「どうして?」
「まず、平尾と同類項だろうね。」
「本田が?……まさか。」
「しかし、昨日からのあいつの態度が証明しているよ。なるだけいい子になろうとしているにちがいないんだ。」
「僕には、本田がそんな卑劣な男だとは思えないがね。」
「ふふん。」
馬田はあざけるように笑った。
馬田は、実は昨日委員会が終ったあと、いつになく気がむしゃくしゃして家に帰って行ったのだった。次郎がみんなのどぎもをぬくような血書を書いたということが第一癪だったうえに、自分もついそれに署名しなければならないはめになり、いかにも次郎の尻馬に乗せられたような恰好になってしまったのが、何としても腹におさまりかねていたのである。