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ぶしゅうこうひわ

武州公秘話

谷崎 潤一郎

01 武州公秘話

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,572 字 · 209 页

青空文庫

と、河内介は一同を制しておいてから云うのであった。

「さあ、坊主、今夜はちょうどよい折だから、あれをやって見ろ」

「あれ、―――あれと申しますと?―――」

そして道阿弥は、犬が主人の顔色を窺うように河内介を見上げながら、パチパチと続けざまに眼瞬きをした。

「あはゝゝゝ、馬鹿、その方物真似が上手ではないか。鳥の真似、蟲の真似、獣の真似、人間の真似、―――啼き声でも、身振でも、何でも真似る。中々その方は器用だぞ。さ、是非あれをやれ」

「あたし、あの者に口をきいてもようございますこと?」

と、松雪院が云った。

「よいから何でもきいて御覧。―――そうだ、そなたが注文を出して、何かやらせて見るとよい」

「道阿弥とやら、お前、何の真似でも出来るの」

「恐れ入りましてございます、ど、どう仕りまして、―――」

道阿弥は又坊主あたまを畳へつけて、切ない、泣きそうな声で呻いた。

「―――いやはや、飛んだことがお耳に入りましてございます。恐れながら、わたくしにそんな藝当は、………」

「こら、こら、偽りを申してはならん。己には何度も見せたではないか」

「殿様は罪なことを仰っしゃいます。奥方様やお女中様の前であんなことが出来ますものか」