轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
01 武州公秘話
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,572 字 · 209 页
則重鼻を失う事、並びに源氏花散里の和歌の事
と云う意味をそう云う風に受け取り、河内介も亦胸中の秘密を押し隠して彼女の解釈するまゝに任せ、両人の間に云わず語らず一種の黙契が出来上ったのであろう。そこで桔梗の方の側から云うと、則重の鼻をりさえすれば満足する筈であった彼女の最初の計畫が、筑摩家を顛覆するところまで深入りしたのは河内介の野望に引き擦られた結果だと云うことになり、河内介の側から云えば、一旦則重を鼻缺けにして彼の奇態な性慾的興味が充たされてしまうと、今度は見せかけの野望が次第にほんとうの野望にまで成長し、此の機に乗じて筑摩家を亡ぼしてやろうと云う冷静な打算と胆略とが知らず識らず働き出したことになるのである。
則重鼻を失う事、並びに源氏花散里の和歌の事
織部正則重は、彼の最愛の妻と家臣との間にそんな密約が結ばれたことを知るよしもないから、その後も毎夜夫人の閨を訪れては、例に依って兎唇の口元をもぐ/\させながら聞き取りにくい甘ったるい私語をさゝやいていた。彼がいかにお坊っちゃん育ちの楽天的な大名であっても、唇を裂かれた上に片一方の耳を殺がれてしまっては多少憂鬱にならざるを得なかったと見え、「その頃より兎角病気で引き籠りがちになった」