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すいちゅうのきゅうでん
水中の宮殿
野村 胡堂
「少女倶楽部」1934(昭和9)年6月〜8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,533 字 · 52 页
――それに背広の袖口の酸だって随分変でしょう」
燿子の疑はなかなか根強いものでした。
「それも、映画館から帰って、金庫が破壊されているので、驚いて上の穴から手を入れたという弁解もあるだろう」と健一。
「あら、お兄様は弁護士見たいね」
「燿ちゃんは検事だろう。ハッハッハッハハ」
「でも、それは弁解よ。一応疑われても仕方がないと思うわ。滝山さんは金庫の鍵を持っているんだから、上の穴から手なんか入れなくたって、扉を開けて中を見られるじゃありませんか」
「でも、中にある平泉館の記録は、何時でも滝山が見られるもので、爺やさんを殺してとる必要はないだろう?」
健一も最後の切札を出しました。
「多分、平泉館の記録というのは、初のうちは大事だったけれど、今ではもう秘密でもなんでもないんだワ。――滝山さんも、唐崎という人も自由に見られるのでしょう」
燿子は又新しい説をたてました。
「…………」
「だから、その記録なんかどうでもよくて、本当はなくなった銅板の方が大事なんじゃありませんか。銅板がなくなると発掘が駄目になった位だから――」
「…………」
「爺やさんを殺した疑を受けない為に、ワザと金庫を破って、そのあまり大事でない記録を隠すか焼くかしたんじゃないでしょうか――」