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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
「加納に返事を出さなかったのは、城介の軍隊での苦労を、あまり知りたくないという気持も確かに動いていたようだ」
栄介は言った。
「ところがそれから、六、七年経って、おれは突然それを知りたくなった。そこで加納に手紙を出して、会って話を聞きたいと申し入れた。すると付箋づきで戻って来たんだ」
「どうして手紙を出す気になったんだね?」
「はっきり判らない。歳月が経って、昔ほどつらくなくなったからだろう」
「齢をとって、そろそろ決着つけたくなったんじゃないか」
私は冗談めかして言った。
「加納の話を聞いても、決着どころか、ますますもつれるだけだ、と僕は思うよ」
「そうかも知れんな」
ちょっと話が途絶えた。栄介は気だるそうに、眼を閉じた。私は古封筒を取り、中をのぞいた。何も入っていなかった。
「これには写真だけ入っていたのかね」
「いや。手紙も入っていたよ」
「何て書いてあった」
「死んだ時の状況を、かんたんに書いてあった」
「ほう。城介君はどんな病気で死んだんだ?」
「自殺さ」
「自殺?」
私にそれは初耳だったので、思わず声が大きくなった。
「うん」
眼を開いて、少し経って栄介はうなずいた。