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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

十一

勤務は暇であった。暇というより、仕事はほとんど後輩の衛生兵に押しつけて、もっぱら休養をとる。時々遊牧民族のパオなどにも遊びに行った。彼等は冬の間は土でかためたパオに定着するが、気候がよくなると羊群を連れて、軽装で湿原帯や草地を転々とわたり歩く。彼等は、野菜を栽培しないし、また食べない。

「あいつらは、ビタミンCはどうしているのだろう」

加納も城介も衛生下士官なので、いつかそんな疑問を起したことがある。結局羊の乳(乳は完全食だから)から摂っているのだという結論が出た。その他支那茶を円型に乾し固めたのを持って歩いていたし、日本茶を土産に持って行くと、たいへん喜んで、おかえしに乾肉をくれたりした。総じて素朴にして純情な民族である。

「あんな生活も悪くはないな」

城介は時折加納に感想を洩らした。

「おれみたいな不器用な男は、あんなぶらぶらした生活が似合う。生存競争はイヤだ」

十一

「そうか。城介は身の上話をあまりしなかったか」

栄介は波を眺めながら、ひとりごとのように言った。午後になって、すこし風が立ち始めていた。

「子供の話はしなかったかね?」

「子供?」

「うん。