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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
「ここはどこだ?」
多磨墓地の門の前に車が停った時、幸太郎はいぶかしげに窓外を眺めながら言った。栄介は扉をあけて答えた。
「多磨霊園ですよ」
「多磨霊園? では墓地じゃないか」
幸太郎はぐいと上半身をうしろにねじ向けた。不安そうに動いていた眼が、急に定まって、きらりと光った。
「誰がこんなところに案内せよと言った?」
「言ったじゃないか。伯父さん」
栄介はうんざりしたように答えた。
「お墓参りをしたいって、この間――」
「お墓って、誰のお墓のことを言っているんじゃ、お前は?」
「もちろんうちのお墓だよ。お父さんや城介やなんかの」
「なに? 福の墓がここにあるのか?」
幸太郎は意外そうに甲高い声で反問した。
「わしは福たちの墓に詣りたいとは言わなかったぞ」
「じゃ誰のお墓に行きたいんですか?」
「大正天皇陛下のおん墓だ。わしははっきりそう言った筈だ」
その表情に嘘はなかった。つまり栄介は何かかん違いをしていたのである。栄介は扉をあけ放ったまま、むっとしたように腕組みをして、背を座席にもたせかけた。
「ではうちの墓には詣らないというんですね」
「それとこれとは問題が違う」
幸太郎はいらだって、前部座席の肩をたたいた。