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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

自分で扉をあけて、老人の手助けするというやり方ではなく、押し込むようにして、乗車させた。幸太郎は無表情にそれに従った。後部座席に栄介と私は並んで腰をおろした。車は動き出した。幸太郎の後頭部と肩が、私の眼の前にあった。肩をおおう洋服の布地は、アイロンをかけ過ぎたのか、けばが磨滅しててらてらと光っている。それはまさしく一帳羅という感じがした。

『こんなに齢をとって、若くして死んだ肉親の墓を訪れるのは、どんな気分のものだろうな』

私はそう考えたが、もちろん口には出さない。私は栄介に別のことをささやいた。

「背骨の具合、その後どうだね?」

「うん。毎週唾液腺ホルモンの注射を受けてるがね」

栄介は浮かぬ表情で答えた。

「根をつめたりすると、やはり痛む。痛むというより、重苦しくなって来るよ。でも一生この重苦しさを背負って行かなきゃならないらしい」

「医者がそう言うのか」

栄介はうなずいた。

「れいの肉腫のようなものは――」

栄介は不機嫌な表情で、ぐふんとせきばらいをした。あきらかに牽制である。

「あれはもういいんだ。心配して呉れなくてもいい」

栄介は早口で言った。そこで私は話題を変えた。