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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

凧の位置からして、どぶ川の岸あたりから揚げていると思われる。風が強く、またそこらで気流が渦巻くらしく、凧はすべて不安定に揺れ動いていた。しばらく正常に中空に姿を保っていても、突然あおられたように左右に揺れ、きりきりと廻りながら、舞い落ちるのもいた。空の青さの中で、それらはたわむれているようでもあったし、必死にもがいているようにも見えた。私たちの吸うタバコの煙も、またちりぢりに乱れ流れた。

「…………」

何か話しかけようとして、私は空から栄介に視線を移した。凧を見上げている栄介の横顔は、石のように固く凝って、微動だにしなかった。眼が木乃伊のようにからからに乾いていた。私は口をつぐんだ。

その時栄介が何を考え、何を感じていたか、私は知らない。