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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

「妙なものを持って来たね」

栄介は首を動かして薄笑いをした。

「造花みたいだね。ほんものかい?」

「もちろんほんものだよ。見れば判るだろ」

私は椅子に腰をおろしながら答えた。

「葬式じゃあるまいし。食べるものでも持って来ようと思ったが、えらぶのが面倒くさいしね」

栄介が造花と言ったのは、冗談だったが、すこしは意味がある。城介に関してのことだ。私はしきりに部屋中を見廻した。

「まだあれはつくらないのか?」

「あれってギプスベッドか」

栄介は笑いを収めた。

「それは昨日つくったよ」

「昨日? 今日つくるという話じゃなかったのか?」

「今日だったかな。しかし医者は昨日来たよ。そうだ。きっと医者が日取りを間違えたんだ」

あきらかに栄介はうそをついていた。私には判っている。彼はやはり背中のコブを見せ惜しんでいるのだ。

「またすっぽかしたな」

私は笑った。

「君はあの頃もよく城介君をすっぽかしたからねえ。城介君はすっぽかされると、いつも僕の下宿に来て、兄貴のやつはだらしがないとこぼしてたよ。だから僕が身がわりになって、いっしょに浅草なんかに遊びに行った」

「あの頃の浅草は面白かったねえ。