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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

その若者たちも、折角遊園地にやって来たのに、何も面白いことがなくて、気分的にやり切れなくなったのであろう。

「殴ってやろうか」

城介は私に言った。冗談だと初め私は受取った。冗談めかしたような口調だったからだ。

「なぜ殴るんだね?」

「女をいじめてるからですよ」

城介は答えた。

「あ。あんなにゆすぶると、おっこちるかも知れない」

私たちは吊橋から谷に降りる中腹の、ベンチに腰をかけて、莨をふかしていた。そこは女たちを斜め上に見上げる位置になる。橋が揺れるので、女たちのスカートが動いて、白い下着や足が見えるのだ。私の眼を愉しませるために、女たちは立ちすくんで騒いでいるように見えたくらいだ。だから私はその時城介の気持をはかりかねた。

「大丈夫だ。切れやしないよ」

吊橋は鉄線で編み、その上に板を敷いてあるので、たとえ手を離してもおっこちる心配はない。女たちもそれを知っているのだろう。悲鳴がむしろ嬌声に聞えるのは、そのせいでもあった。

「甘えて騒いでるだけだよ。僕たちとは関係ない」

「関係ありますよ」

今度は押し殺したような声で、城介は言った。

「あいつら、さっきおれたちと売店の前ですれ違った時、ふんと言った調子で、唾を地面にはきやがった」