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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

やはり記憶の点と点との間に消失してしまったのだろう。

「県庁をやめさせられて、おやじもずいぶん困ったらしい」

栄介は枕の位置を変えながら言った。

「あれは不景気な時代だったからな。でも、学校時代の友人が経営している小さな会社に、やっと入ることが出来た」

「職業の問題って、それなのか」

私は訊ねた。

「そうだよ。役人というやつは、今でもそうだが、昔だって同じで、民間人に対して反りくり返っていた。つまり高姿勢だったということだ」

「君のおやじさんも、反りくり返っていたのかね」

「かどうかは知らないが、一般的な傾向としてはそうだったね。それが小さな会社勤めになり、ぺこぺこする立場になったわけだろう。背中がすこしずつ前屈して来るのも、当然だと思うな」

それは冗談めいた口調であり論議であった。私は栄介の父親に、もちろん会ったことはない。痩せて筋張った、生活に疲れたような中年男を、漠然と想像するだけである。

「おやじはそして校長に会いに行った。こんな不面目なことをしたから、城介を退学させたいと申し込みにね。それがいさぎよい行為だと、おやじは信じたんだ」

しかしそれは早まり過ぎたことだと、栄介は考える。