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わたしのりれきしょ

私の履歴書

井上 貞治郎

――放浪の末、段ボールを思いつく

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页

青空文庫

しけている。にんにくのにおいの混ったなんともいえぬにおいが、むっとただよっていた。私はその男と二人、たたきの上にアンペラを敷き、ドンゴロスの袋をかぶって寝苦しい一夜を明かした。

アン巻き屋の男は朝早く起きて、出かけていったが、間もなくバケツに麦半分の冷飯をぎっしり詰めて帰ってきた。三銭で軍隊の残飯を買ってきたのだという。私たちはこれに塩をかけて食った。バケツ一杯が一日分の食料なのである。朝飯後、男はまたアン巻きの道具を背負い、私を部屋に残して商売に出かけていった。一人残され小窓をのぞくと蝋石の塔が見える。あらためて部屋の中を見回すと、ふとん代わりのドンゴロスの袋、食器に使うゆがんだバケツ……。旅路の果てのどん底の生活であった。

私には、人間がどんなことでもできる、いかなる悲惨、困窮にも耐えられる強い忍耐心を天からさずかっているように思えてくる。いよいよ食えなくなれば、往来へ大の字に寝ころんでやろう。三日ぐらい食わずとも死ぬこともあるまいと、私はこのどん底の生活に、すっかり捨て身になっていた。私はここで三晩明かした。そして男が商売に出かけたあと、お礼の置き手紙を書いてその部屋を後にした。