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あきのかご
秋の駕籠
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,356 字 · 35 页
六助の渋るのをみて、彼もまたいやきがさしてきた。本来なら断わる仕事であった。いそという客もじつをいえば気にくわないし、五両という駄賃も莫大すぎた。喧嘩のために半月以上も遊び、すっからかんになっていたのと、たまにはそのくらいの金を持ってみたいという気持から、つい引受けたのが、今になってみると逆に不愉快でいまいましくなった。
「六郷から向うは初めてだな」六助が励ますように云った、「金を貰って遊山旅をするようなもんだ、しょうばい冥利ってものだぜ」
中次は「うん」と云うだけであった。
翌朝の五時、二人は弾正橋でいそという客とおちあい、箱根へ向って出発した。気分は重かったし、大森で早めの昼食をするとき、二人は客がかなりな金を持っているらしいことについて、囁き合った。
肩に当る感じでわかるという、金五十両から上は間違いなくわかる、なかには十両でも「肩へこつんとくる」と云う者もあるが、そのときの感じではかなりな額らしかった。
――このくらいか、六助は指を二本みせて眼で訊いた。中次は考え深そうに首を振り、そっと指を三本だしてみせた。そして、二人はお互いに不吉な予感におそわれた。