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かがくはやくにたつか
科学は役に立つか
中谷 宇吉郎
「心」平凡社、1954(昭和29)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,240 字 · 41 页
その場合、そういう論文に、二種類のものが有り得る。本当に毛の強さを測ったのならば、それはいつかは役に立つ部類の研究である。しかしたくさん数字は並んでいるが、本当の毛の強度は測らなかったという場合も、有り得るのである。
例えば、毛を引っ張る場合には、両端を何らかの方法でつかまえる必要がある。ごく小型の万力みたような装置を作り、それで毛の一端を挾んで引っ張るというのが、一番簡単な方法であるが、この場合、緩く挾んでおけば抜け出るし、強く締めつければ、そこが切れ易くなる。それでこういう研究では、毛のつかまえ方が一番大切なので、そこを曖昧にしたまま、無闇とたくさん毛を引き切って、その力を測っても、意味のない数字がたくさん並ぶことになる。
出てきた結果は、締めつけ方で、毛がどう弱くなるかを測ったことになるので、それは毛の本体を調べたことにはならない。それでこういう研究は、直接にはもちろんのこと、いつかは役に立つというものではない。
本当に役に立つ研究にしようと思えば、毛を傷めないで、巧く捕える点に、大半の努力を払わねばならない。しかし毛の締め方の研究では、学位は貰えないので、短年月のうちに、とにかく論文を書いてという場合には、どうしても、そういう「瑣細な点」