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かがくはやくにたつか
科学は役に立つか
中谷 宇吉郎
「心」平凡社、1954(昭和29)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,240 字 · 41 页
それを詳しく書くとなると、以前に文藝春秋に書いた『民族の自立』と同じことになってしまう。すなわち、日本の立地条件に即して、民族の生きるためという目的をもった研究を、基礎的に行なうことに帰するわけである。同じことばかり言っているようであるが、こういうことは、少なくも自分にとっては、変り得ないものであるから、仕方がない。
立地条件に即するというほうで、一番重要なものは、日本の未利用資源、あるいは不完全利用資源の開発である。この方は結局のところまた、雪は資源であるというような相も変らない話に落着くことになるので、さすがに今度は遠慮することにしよう。立地条件に即するというのは、どこの鉱山にあるどの鉱石が現在は棄てられているから、それを何とかしようというのではない。もちろんそういう問題も、この中に含まれるが、それはごく一部分としてである。立地条件という言葉は、もっと広い意味に解すべきで、考え方の背景に、日本の国土というものをもっていることである。
真理の探究という点だけからいえば、シベリアのポドソールの研究も、北海道の火山灰の研究も、同格である。原子論としては、日本にほとんどない元素の研究をしても、ちっともかまわない。