轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
わらうあくま
笑う悪魔
野村 胡堂
「ロック」筑波書林、1948(昭和23)年12月~1949(昭和24)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,687 字 · 55 页
「ところで、その天狗の笑いだが――」
元の奈々子の部屋に帰ると、花房一郎はもう一度安楽椅子にドカリと腰をおろして、先刻の話を巻き直します。
「天狗の笑い?」
「奈々子さんがさらわれた時、頭の上に聞えたという笑い声だよ、それはどの辺から響いたと思う?」
「頭の上だ――丁度この部屋のあたりかな、何しろ人間離れのした凄い笑い声だったよ」
千種十郎は、その笑いを思い出して、背筋の寒くなるような心持を感じて居たのです。
「無論男の笑いだろうな」
「皮肉で暴慢で、横着で空々しくて、恐ろしく暴君的な笑いだったよ、――あ、あ、あの笑いだ」
「何?」
「あの声だよ」
千種十次郎は聴耳を立てました。
その時丁度、何処からともなく、夜の空気を揺がして、凄まじい笑いが聞えて来たのです。
花房一郎は立上って窓から首を出しました。
「ワッ、ハッハッハッハッ、ハッハッハッ」
次第に大きく、次第に強く、夜空一パイに拡散する笑いの波は、千種十次郎が言ったような、それは暴慢で虚無的で、そして悲劇的で、妙に涙をさえ含んだものでありました。
「隣の建物だ、――あの窓の中だ」
花房一郎はこの窓に面したコンクリート建の土蔵を指すのです。