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わらうあくま
笑う悪魔
野村 胡堂
「ロック」筑波書林、1948(昭和23)年12月~1949(昭和24)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,687 字 · 55 页
復讐第二段階
それは僅かに此窓から十メートル位しか離れない、恐ろしく厳重なものですが、それは何が入って居るか、もとより知る由もありません。
復讐第二段階
部屋から飛出した花房一郎と千種十次郎は、階段の下でバタリと主人の熊谷三郎兵衛に逢いました。宵の落着き払った傲慢な態度は、愛嬢奈々子の失踪と共に何処かへかなぐり捨てて、
「あの声だ、――花房さん、あの笑い声だ、娘はあれにやられたに違いありません」
言うこともしどろもどろで、すっかり取乱して居ります。
「御主人、あの笑い声は、お嬢さんの部屋の窓の外にある、コンクリートの土蔵の中から響いて来るようです。あの土蔵の中には一体何が入って居るのですか」
「土蔵の中――に、大変ッ、あの中には私が半生を傾けて集めた、美術品が入って居る、勘定し切れないほどの値打物だ――」
主人の熊谷三郎兵衛は、口をパクパクさせ乍ら、取乱した姿のまま警衛に来て居る警官を突き飛ばすように、内玄関から外へ飛出してしまったのです。花房一郎と千種十次郎がそれに続いたことは言う迄もなく、まだ踏み留って居た新聞記者――早坂勇始め五六人の者も、誘われるようにバタバタと外に飛出してしまいました。