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わらうあくま

笑う悪魔

野村 胡堂

「ロック」筑波書林、1948(昭和23)年12月~1949(昭和24)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,687 字 · 55 页

青空文庫

天使の魔睡

ところまで漕ぎつけたのだ」

「それは困る、僕は美保子さんを脅迫するようなことはし度くない」

千種十次郎は大に二の足を踏みました。

「脅迫では無い、正義のために、美保子さんが進んで、君の前で打ち明け話をしようというのだ――勿論明日の午前十時迄に、病院へ行ってくれることだろうな」

「いや」

「いやも応もない、――君の友情に信頼してこの花房一郎が頼むのだ」

そう言って花房一郎は、軽くお辞儀をして見せるのです。道化たような態度のうちに、妙な真剣らしさがあって、巫座戯屋の足の勇や、虎井満十までもシーンとした心持にさせます。

天使の魔睡

翌る日九時頃、まだ迷いに迷って居る千種十次郎のアパートへ、花房一郎は警視庁の自動車を持って迎いに来ました。まさに嫌も応も言わせない段取です。

美保子が傷の治療をして居る番町の病院に入ると、中は何んとなくソワソワして、医者も看護婦も落着かぬ様子で右往左往して居りましたが、いつものように美保子の病室の前へ来て、ノックしようとして驚きました。

病室の中は二人の医者と看護婦と婦長が入って、扉も開けたまま、ひどく取乱して居るのです。

「どうしたのです、僕は警視庁の者だが――」